清教学園研究報告会「入学時からはじめる読書生活の習慣化」

3月8日(土)に行われた
学校法人清教学園文部科学省委託研究報告会
「入学時からはじめる読書生活の習慣化―学校図書館と学校司書の役割―」
に参加させていただきました。
研究報告会の詳細はこちら(※PDFファイル)です。

当日は報告会の開始前に1時間、
清教学園の学校図書館「リブラリア」の見学時間がありました。
清教学園は中学・高校の私立学校ですが、
探究型学習に力を入れており、
特に中学校2年生〜3年生で行う卒業研究、
高校2年生〜3年生で行う卒業論文が有名です。
当日は生徒さんが作成された卒業研究や卒業論文も展示されていました。

卒業研究は私が勤める学校でも昨年度の6年生で行ったのですが、
その際のトップ5クラスの完成度のものが
この清教学園の中等部の卒業研究では平均レベル。
さすが中学生、また巻末の引用文献も小学校とは異なり
専門的な資料が多い印象です。
また、後頭部の卒業論文は大学生顔負けの内容です。
研究テーマも難しそうなものが多く、
テーマの定義から始まり、先行研究をしっかり読んで分析し、
フィールドワークも時間を書けて行っている印象でした。
また、卒業論文を書いた生徒さんにパスファインダーを作成してもらっており、
パスファインダーは参考文献やサイトだけでなく
マインドマップも掲載されていて、
後輩の生徒さんたちに大いに参考になるものでした。
パスファインダーだけでなく生徒さんの作品も開架にあり貸出もしていて、
研究を積み重ねてブラッシュアップされているのだと思います。
また、卒業研究・卒業論文を支える蔵書は
学校図書館とは思えない・公共図書館でもこれほどではない、
生徒の探究を支える充実した蔵書でした。
書架を眺めていると並んでいる本がまるで「プチ大学図書館」
というような印象です。
どの分類もテーマに親しむきっかけになる簡単な内容の本から
研究をするための論理的な本まで幅広い蔵書でした。
見学タイムは1時間だけでしたが、
この見学だけで既にお腹いっぱいになりそうでした。


見学が終わり、いよいよ研究報告会。
文科省委託研究のテーマは「入学時からはじめる読書生活の習慣化」。
おそらくどこの学校も抱える課題だと思います。
発表では

「探究型学習には読書力が欠かせない」

にも関わらず

子どもたちの抱える課題として

「テーマが決められない、知的関心の乏しさ、
 計画性の欠如、知識・語彙力の読解力の低さ」

が挙げられていました。
以前東京大学中等部の卒業研究に関する公開研究会でも
同じような課題が上がっており、
私の勤める学校で卒業研究を行った時も
似たような課題が出ました。
どこの学校も抱える課題がこれだけ似ているとなると、
その原因が果たしてどこにあるのか。
清教学園ではその原因として

「知識を仲立ちするメディアに対する信頼感の欠如、
 肯定的な学習観の欠如」

を挙げられていました。
そしてその原因の解決のためには
「入学時からはじめる読書生活の習慣化」が必要と考え、
「すくど文庫」と「おためし読書」の2つの実践を行われており、
その発表がこの研究報告会で行われました。

「すくど文庫」とは入学したての新1年生向けの文庫。
2013年度時点で合計約2300冊、
内文学が約1400冊で残りがノンフィクションです。
フィクションは中学校の司書教諭の先生が、
ノンフィクションは館長であり高等部司書教諭の先生が
選書されています。
フィクション・ノンフィクションともに選書方針も決めておられ、
本の難易度も読みやすいものから難しい物まで幅広く選書されているとのこと。
すくど文庫のねらいは「おもしろい本と出会う機会」を作ることであり、
カウンター近くに置き司書教諭や司書との
コミュニケーション作りも目的にされています。
また、そういった面白い本との出会いや職員との接点を作ることで、
図書館への信頼を増すことも目的にされているとのことでした。
すくど文庫設置後は1年生の貸出冊数も順当に伸びていました。
また、学級文庫への貸出も来年度から予定されているそうです。
すくど文庫のリストは冊子として生徒さんに配られ、
冊子には読書記録を付けるページもついています。
小学校で読書教育を受けていない、読書に馴染みのない生徒さんには
本と出会う良いきっかけになるように感じました。


そしてこの「すくど文庫」を活用した
「おためし読書」という授業が行われているのですが、
その前に「カウンターから見える学校司書の任務」として
清教学園における学校司書さんの業務の説明がありました。
高校の全クラスでの利用案内、新刊案内の配布、
コーナー展示やブッカー選手権、図書館クイズ、
クリスマス会(クリスマスの工作をされていました)
などを行われているとのことでした。
図書委員会もこれらの活動に関わっているようでした。
また、カウンター・フロアワークの統計を取り、
生徒さんとの対応がどのようなものがあり
どのような対応をしているかを分析されていました。
約1ヶ月間強の間に対応件数は100件、
読書案内やレファレンス・利用案内から、
利用マナーの悪い生徒さんの対応なども
詳細にどのように対応しているか報告されていました。
生徒さんから悩み相談などされることもあるのは
中高両方の生徒が利用する図書館ならではかなと感じました。
ただ、一方で利用案内が利用マナーの向上につながっていないのか?
また探究型学習と学校司書の関わりはどのようなものなのか?
読書相談やレファレンスが読書生活の習慣化や
探究型学習にどのように貢献しているのかが
少し見えてこなかったのが残念でした。


休憩を挟んで(なんと飲み物とお茶菓子が出ました)、
最後は冒頭の「すくど文庫」を活用した「おためし読書」の発表でした。
「おためし読書」とは総合学習の時間に行われる授業。
フィクションならば2冊を7分間で、
ノンフィクションならば3冊を5分で、
拾い読みや冒頭を読むなどしてともかく短い時間で
本を「おためし」で読み、時間がきたら読んだ本を4段階で評価。
1回目が終わったら本を回し、また違う本を読んで評価し…
というのを授業1時間の間に繰り返す、という内容です。
この「おためし読書」のために「すくど文庫」から
フィクションの本87冊、ノンフィクション129冊を選び出し
「おためし読書」に使用されています。
フィクションは司書教諭の先生が選ばれたものと
評価の定まっている作品が、
ノンフィクションは中学生の読書ニーズにあったものを
選書されているとのことでした。
リストを見みてみるとフィクションは確かに
ここ数年で評価の高かった作品や何十年も読み継がれている名作が、
ノンフィクションは多種多様な作品やマンガも入っています。
「おためし読書」の生徒さんの評価は回収して
データ分析し、1冊1冊の評価点数や
男女別の傾向や共通の人気作品などを観て、
さらにリストをブラッシュアップされているようです。
ただ、ここでもこの選書に学校司書さんが
どのように関わっているのかが不明でした。

「おためし読書」は参加者で実際にやってみたのですが、
読書好きな自分としては未知の本と出会う楽しみがあり、
次にどんな本が回ってくるか?どの本を読もうか?と、
楽しく読むことができました。
これが読書嫌いの子の立場になって考えてみると…
判断が難しいところです。
これを5回も6回も繰り返されると苦痛ではないか?
一方で選書が上手くいけば面白い本との出会いが確実に作れて
読書を好きになるきっかけ作りができるのでは?と感じました。
それだけに、選書が非常に難しいように思いました。
フィクション作品はともかく冒頭が面白い作品、
超有名な作品や映画化された作品などを意識して選ばれているのかな?
とリストを見て感じました。
ノンフィクションはおそらく卒業研究や卒業論文で
子どもたちがよく選ぶテーマの分類の本で、
中学生でも読みやすそうなものを選書されているように思いました。
た詩歌の本がどちらにも1冊も入っていないのが少し気になりました。
また、この「おためし読書」は学期に1回行ったとのことですが、
何回も続けて行うのは厳しいなと感じました。

発表終了後の質疑応答は無し、研究報告会に関するアンケート解答は
紙とともに「REAS」という無料のアンケートサイトも利用されていました。
REASを使って解答しようとしたのですが
書き終わって送信しようとしたらタイムアウトに…
あらかじめログインしていて長時間経っていたのが原因かと思います。
ただ、これなら後日家に帰ってからゆっくり解答できるのが
良いかなと感じました。


「読書生活の習慣化」は学校図書館が長年抱えている課題かと思います。
清教学園の「すくど文庫」はオーソドックスな取り組みではあるものの、
「おためし読書」でさらにもう一歩踏み込んだ取り組みをしている印象です。
朝の読書も行われているとのことなので、
学級文庫での「すくど文庫」の活用も効果的なように感じました
(学級文庫には感想ノートも一緒に置かれていました)。
ノンフィクションの本も幅広く入っているので、
卒業研究や卒業論文にも繋がっていくのだと思います。
またこの「すくど文庫」や書架に並んでいる蔵書を見ると
ともかく選書にとても力を入れられているのが伝わってきました。
ただ、そこに学校司書がどう関わっているのか?
というのをもう少し聞いてみたかったところです。
また、図書館自体は蔵書は素晴らしいのですが
中高の生徒さん約2000名に対して狭すぎる、
閲覧席も少なすぎるように感じました
(ウチも人のこと言えないのですが…)。

以上、研究報告会の感想でした。
読書教育や探究型学習を考える上で、
やはり清教学園の取り組みはいつも大変参考になるなぁ、と
改めて感じました。
清教学園関係者の皆様、発表ありがとうございました。


清教学園研究報告会「入学時からはじめる読書生活の習慣化」」への1件のフィードバック

  1. なぎ

    研究会ではお世話になりました。
    こんなにわかりやすくまとめていただいて、あらためて「そうだった、そうだった」
    と納得しています。

    ―「学校図書館とは思えない・公共図書館でもこれほどではない、
    生徒の探究を支える充実した蔵書
    ―「書架を眺めていると並んでいる本がまるで「プチ大学図書館」
    というような印象」
    本当に同感です。
    図書費が比べものにならないくらい少なくて、とても真似できないけれど
    少しでも近づけるように、学校図書館の底力を(学校に)アピールして
    いきたいと思いました。

    見たこともないような蔵書に、圧倒されてぽ~っとなっていましたが
    確かに、司書教諭と学校司書の仕事の分担というか、それぞれがどう関わっているか
    気になるところですね。

    帰りの電車でフレディさんにメールしたら驚いていました。
    一度松山にもお招きしてお話をお伺いしたいとのこと
    その節は、ぜひ私もご一緒できたらと思います。
    今後ともどうぞよろしくお願いします。

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