さくらの里の風来坊



川端誠さんの『風来坊』シリーズ、笑いもあり、手に汗握る展開もありで、子どもにも人気の高いシリーズですね。けれど、この『さくらの里の風来坊』はちょっと違うんです。

とある山里にやってきた風来坊。お寺の境内を借り、一心不乱に仏像を彫ります。仏像を彫る風来坊の表情は、目を見開き歯を食いしばり、まるで木槌とのみに怒り(あるいは苦しみ、悔しさ)をこめているかのような…。その表情には、そして作り上げられた仏像には、旅で目にした、否、旅をする上でどうしても避けられない、目にしたくなくても目にしてしまう、どうしようもない現実の悲しみがこもっていた。仏僧として生き人々の助けをしつつ旅をしていても、どうしても助けられない人たちへのやるせない想い。出来上がった不動明王の顔が、風来坊の表情と重なる。しかし、風来坊はもう1体の仏像を作る。後悔の内に死んだ女を供養するために作った観音像。その観音像は、女の故郷の村が見渡せる場所におさめた。桜で満開の里が見える場所に…

と、長々と書いてしまいましたが、他の『風来坊』シリーズ、というより川端誠さんの作品の中でかなり異色なのがわかるかと思います。子どもに読み聞かせしてこの絵本が果たしてウケるかどうか、というのはかなり難しいラインです。この絵本の世界に入り込むためには、それなりの下準備が必要かと思います。ブックトークで桜に関する和歌などと合わせて日本人が持つ桜への思いを紹介しつつ、読み聞かせしてみてはいかがでしょうか。


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